「石小屋沢」を想う歌


高橋小一郎

1 吾は山の子 さすらいの
   「アオ」@の住みなす 笠堀に
  渓の深みや 樹の緑
   今日の泊場は 石小屋か
2 ブナの梢が 揺れながら
   谷間に煙 流れれば
  夕餉の集い 待つがごと
   渓にたそがれ たちこめぬ
3 吾を迎えし 石小屋に
   たき火燃えさかり 語りつきず
  沢音破る 仏法僧
   いざや聞かんかな 耳すまし
4 渓の夜明けは 暗けれど
   心ははずむ 沢登り
  霧に濡れてる 姫小百合
   目指すスラブは 陽に映えて
5 暗いゴルジュに 滑る岩
   しぶきはかかる 「イヤガラセ」
  越えて陽に映(て)る 爼(まないた)Aの
   スラブに燃やせ 若い血を
6 風は涼しく 息休め
   登りつめたる ザッテルは
  五葉の林 シャクナゲの
   花の道なる 「三工尾根」
7 秋は紅葉(もみじ)に 色はえて
   風は白根(しろね)の沢 渡り
  岩魚住む渕 青く澄み
   山のあなたは 光明か
8 ガケに懸かれる 老松の
   幹に命のザイル たくし
  浮き石飛べば 声かかり
   息の間に見るは 岩小屋か
9 河岸台地の ブナ林
   昔のままに 残れるは
  これぞ自然の 恵なり
   ここに幸あれ 山岳部
10 想いは残り 振り返る
   松の緑も いや深く
  ウルイサドリに 咲く花は
   雪の下にも 耐えるかや


註@アオ:カモシカのこと。アオorアオシシとも言う。
註Aシルバーザッテルより石小屋沢のツメに広がるスラブを爼ぐら(くらはスラブの意)と言い、5万分の1地図にも記号はついている。

 楽譜は「第三高等学校琵琶湖就航の歌」と同じ。
 譜の読める人は、ギター、ハーモニカ、ピアノ、バイオリンで音を合わせ、メロディーを憶えておいて下さい。
 歌詞は合宿の折に皆で歌っている中に、皆の心に合ったものが自然と生まれてきて、歌い易い、長く続いて歌えるものになるかと思いますので、試作の文言にこだわらないで下さい。
 6月30日の夜、一人飲みながら、一晩でできた歌詞ですが、無理な所も多いと思います。山岳部、OB会の心の歌となり、合同合宿の折には、いつも自然のうちに歌われる歌となってくれればよいかと思います。

1975.7.1


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