鳥海山ロング・スキーツアー


渡辺五郎(昭和43年卒 三条工業3回生)

 鳥海山は福島に住むようになり残雪期、夏山と年に数回通うようになった。その鳥海山に初めて行ったのは79年5月の連休で、月山と鳥海山の3泊4日のスキーツアーだった。
  鳥海山はブルーライン側から入り外輪山から新山に登り、千蛇谷を滑り御浜からブルーラインに戻った。次の日も続けてヨーロッパアルプスの氷河を思わせるこの谷を滑った。この千蛇谷は鳥越川と続き何処までも滑れそうで、何時かはと考えていた。
 5月の連休に、ゴールである水力発電用の取水口のある車道近くまで雪が残っている事はあまり無く、秋田の仲間に問い合わせながら機会を狙っていた。

2006年5月3日(晴れ)

 ウオーミングアップで月山の石跳沢を滑り鳥海山に移動。千蛇谷〜鳥越川滑降のゴールである鳥海マリモを観察できる獅子ヶ鼻の取水口手前まで車で入ることができた。そこに私の車を置いて3人の仲間ともう1台の車で南由利高原の青少年旅行村のバンガローに向かう。

5月4日(快晴)

6:20 祓川発 福島市の仲間に会い挨拶する。彼等は前夜発の日帰りでアイゼンとピッケルでの登りだ。今日は天気が良いので多くの登山者を見る。

7:45 七ッ釜避難小屋着

9:45 七高山着 途中に朝会った仲間と話し込み同行の3人より送れて到着。皆を少し待たせてしまった。そのまま最高峰の新山に向かう。

10:20 新山着 快晴の中シールを外しこれから滑る長いコース、千蛇谷と鳥越川を見下ろす。気温が低くて雪の条件の良い内に滑降を開始する。
 新山と七高山のコルの南面が一部悪かったがザラメ雪とフイルムクラスト状の雪面を快適に滑る。日本海が目の前に見え、我々の前後左右の景観が日本離れして夢の様だ。次から次へと何も障害物の無い大斜面が現れるのだ!テレマークスタイルが2人、アルペンスタイルが2人、足の筋肉が痛くなるまで滑り続ける。ともかく雪の状態が良い。良く滑るのだ。
 千蛇谷が鳥越川になり昼食を計画していたが風が強いので滑り続ける。稲倉岳の東壁を見上げる台地状のブナの疎林で1時間半の昼食とする。
 昼食後もブナ林の中の滑りが続く。海抜600m、台地状の下の急斜面を過ぎると鳥海の奇形ブナ、アガリコブナが目立つ。説によると江戸時代から炭焼きの為に枝を採取し続け独特の姿になったと言われている。
 暫くすると雪が切れ始めて来る。海抜550mの地点でスキー終了となった。

14:20 取水口着 スキーを終了から5分で着く。

14:35 車デポ地着 
 いつかこのコースをと思っていた事が実現できた。標高差1700m、距離10kmのコース。登り返しは無く、ただ滑るだけ。皆、大満足だった。
 帰路再び、今朝出発した祓川登山口に車を回収に戻るが、鳥海山が晴れた空にドーンと聳え、何時までも余韻に浸っていた。
 翌日のもう1つのロングコース、北東側にある猿倉コースのゴールに車をデポしてから入浴後バンガローに戻る。

5月5日(風後風雨)

6:25 祓川発 出発の時はすでに天気は下り坂で山頂付近に笠雲がかかり強風が吹いていた。とりあえず七ッ釜避難小屋に向かう。

7:55 七ッ釜避難小屋着 暫く様子を見ていたら雨が降り始めたので登高を中止。シールを外して滑り始める。
この猿倉コースは地形が複雑だが幸い視界が有り、雨と強風の中の滑りだったが祓川の小屋や車道を確認しながらゴールの堰口を目指す。

9:20 堰口着 雨の中到着する。
  このロングコースは七高山をスタートすると標高差1500m、距離が8kmであるが、また次回の楽しみとした。
 暫くしたら鳥海の情報を教えてくれた秋田の仲間のパーテイが下ってきて挨拶をする。彼らも昨日は千蛇谷から鳥越川を楽しんだとの事だった。
  東北でこのような長い滑りの連続したコースは鳥海の他に吾妻山の「大沢下り」と呼ばれているコースを知っているが、昨日と今日のロングコースは指折りの一つと考えている。


   |   サイト内検索

Copyright© 新潟県央工業高校(旧・三条工業高校)山岳部OB会