渡辺五郎(昭和43年卒 三条工業3回生)
二十歳過ぎから楽しんでいる山スキーのスタイルは30年余りの間、所謂アルペンスキーで兼用靴を使い、金具はジルブレッタで登りも滑りもガシガシやっていた。
何時か50歳になったらテレマークスキーに切り替えたいと考えていた。しかし50歳近くになり、あのテレマークは片方の踵を上げた独特のスタイル、ヒールフリーなので、体力的にまた技術的に心配になって来た。
2003年2月にツアー仲間と裏磐梯の猫魔スキー場から雄国沼に向かった。このときは私だけがアルペンスタイル、他は皆テレマーカーで樹間の狭いブナの林を華麗に滑っているのを見る。私の偏見でテレマークスキーは北米等の大きな雪山で何の障害物も無い大斜面を大きなシュプールを描くものと考えていたが裏磐梯で1000m級のブナの林や潅木の中をまるでバレリーナのように華麗に滑るのだった。
このシーズンは何回かテレマークの仲間に入れてもらい彼らから刺激を受ける。彼らの滑りを見、これなら私も出来ると思い春先に、最初に旧モデルで格安なフォルクルのスキー板を購入して逃げ場?の無いようにした。11月になりショップでスカルパのテレマークブーツを購入し春に買った板に金具をセットしてもらう。昨シーズンまでのアルペンの道具は封印して準備完了となった。
人前に出る前にまず一人で練習、12月に入りあだたら高原スキー場に向かう。
斜滑降の時にアルペンスタイルは山側のスキーを前に出すがテレマークスタイルは谷側のスキーを前に出さなくてはならない、長年の身体に染み付いたスタイルからすぐには変更できなかった。更に両足均等の加重、これが難しいのだ。
その後、テレマークの仲間に入りスキー場の講習会に参加したが2〜3日位で恥ずかしくない滑りが出来るようになった。
かつては、テレマークと言うと細い板で革の靴であったが今は160から170cmのカービングの板、さらにプラスチックの靴なので早くテレマーカーになる事が出来た。テレマークを始めてギブアップする人はこのような細板と革靴で始めた人や全くスキーの経験が無くテレマークに入った人達だ。しかし今でも細板と革靴を愛用している人も時々見かける。
2月に入り早速手始めに一人で安達太良山に出かける。初めてシールを付けて山頂をめざす。アルペンの金具は登高時に金具が蝶番のように曲がるがテレマークは靴のベローズの曲がりと金具のワイヤーの曲がりで踵が上がり前に進む。少し違和感を覚えたがすぐに慣れて乳首を経由して矢筈森から振り子沢を滑る。
その3日後には福島市内にある吾妻山の会の山行に入れてもらい吾妻山の吾妻小舎泊の高山下りを楽しむ。2日目は夜間に降雪があり30〜40cmの新雪の中を滑ることが出来た。
このシーズンは更に10日余り滑り、最後は尾瀬の燧ケ岳がスキー納めとなった。
テレマークスキーは歩く、登る、滑るにバランスよく適していると言われているが私は確かにその通りと実感している。ともかくスキー板、靴、金具を含めて足回りが軽いので楽に歩き回れるし登りも楽にこなせる。ヒールフリーのためにアルペンのようにアイスバーンをガシガシ登る事は出来ないがその時は板を外して歩けば良い。難点は靴の先端が曲がるので兼用靴のようにキックステップが確実に出来ないのだ。滑る時はヒールフリーなので何かの拍子で顔面制動?の心配があったがしっかりと正しいポジションに乗ればそのような心配は無い。
ここで一番に強調したい事、私の好きな点は、ヒールフリーのテレマークスキーは雪面と常に「対話」をしながら滑れるのだ。ちょうどゴム長を履いて里山を楽しむように・・・。
ただ重い荷物を担いで滑る時や、深雪のラッセルはアルペンスタイルの方が安心だがテレマークの自由さには勝てないと思う。
私は次のシーズン前に今まで愛用していた封印中のアルペンの道具を山仲間に使ってもらう事にした。
さあ、アルペンスタイルで山スキーを楽しんでいる皆さん、テレマークスキーをお薦めします。私は54歳の時に始めましたよ、また多少スキーの経験が有ればゲレンデで数日練習すれば山に入れますよ。やはりテレマークスタイルだったら何時までもゲレンデで滑っていないで慣れたら早く山に入り楽しんだ方が似合うと思います。
私は毎年、冬から5月の中旬までは毎週山スキーです。福島の山を案内しますのでいつでも連絡ください。