ヒマラヤ行(短歌10首)


斎藤 勲

スンパテの香るモレーンの上辿る
   チョ・オユーの山並み 未だ遠くあり

 ゴーキョよりモレーンの上をゴジュンバ湖へ向かう。 スンパテは線香の原料となる低潅木。

 朝のチョ・オユー


ピッケルを振るえど ピックを跳ね返す
         カンチュン氷河の氷の硬さよ

 カンチュン氷河を登攀するも、氷は硬くピックは1pしか入らない。

  カンチュン氷河

 そして、クレバスに行く手を阻まれ、標高5500mで中途退却する。


モレーンの山腹はるばる辿り来ぬ
     ゴジュンバ湖あり 竹色のうみ

 ゴーキョの手前よりゴジュンバ湖まで、五つの湖があるが、それぞれに色相が異なる。

ゴジュンバ湖


モレーンの山腹高く聳え立つ
     サガルマータは世界の頂

サガルマータとローツェ

ゴジュンバ氷河のモレーンの上にたつと、サガルマータが圧倒的な高さで聳え立っていた。


一瞬の蒼空映し輝ける
    ニレカ氷河の雪の白さよ

 2006年は時間切れでニレカ・ピークの標高5600m地点で中途退却した。

ニレカ氷河末端の登攀


サガルマータ 夕陽を受けて聳え立ち
            氷河の奥に輝けるなり

 2007年10月29日17時13分に始まったサガルマータの 夕焼けは、17時24分に陽が落ちて終った。僅か11分の地上最大のショーであった。

サガルマータの夕焼け


スンパテに触れれば仄かに匂いたつ
          旅路を戻る 我と語らん

 スンパテに手や脚が触れると、仄かに線香系の匂いが漂ってくる。
 低潅木の存在感を示しているようだ。

スンパテとケルン


レッサンピリリ 踊るシェルパの声高く
         ルクラの夜は更にふけ行く

 レッサンピリリはネパールの民謡。
 下山祝いのトンバとロキシーに酔いながら、ポーター達の歌と踊りはまだまだ続く。

オールスタッフ


秋晴れの 枯れ葉落ちたる公園で
        遥かに思うヒマラヤの空

 昨年もそうだった様に思うが、ネパールから帰って来ると、現地の印象が余りに強烈過ぎて、暫く日本の山に登ろうとする気持ちが湧いてこない。小春日和の公園で、ネパールの山々を思い出している。


育ち得ぬ 夢を抱きて北へ向かう
         さすらい人の衣を奪え

 60年人生を生きてきて、いくつもの夢が生まれては消えていった。
なかには、繕いながらも未だ抱き続けている小さな夢もある。そんな夢は、上着の下にしっかり守り、北風に向かい歩いて行きたい。

エベレスト、ローツェ、アマダブラム

霧に浮かぶカンテガ


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